
日々の業務で、DWHでデータを整備したあとにBIツールへ持ち込んでグラフを作る……そんな手間を煩わしく感じることはありませんか? もし一つの環境でDWHから可視化まで完結できれば、認証やデータ転送、権限設定といった細かな調整に追われることなく、もっとスムーズに分析に集中できるはず!
そこで今回は、昨今話題の Databricks が提供する AI/BI 機能 を取り上げます。「名前は聞くけど実際どうなの?」「従来のBIツールとどう違うの?」——そんな疑問に応える紹介記事です。
はじめに
みなさんこんにちは、インテージテクノスフィアの若宮です。 Databricks に新しく AI/BI 機能が加わりました。 データの取り込みから可視化まで、すべてをDatabricks内で完結できるかもしれない——そんな期待を抱かせてくれる機能です。
私も普段はデータ基盤とBIツールを使い分けながら分析をしていますが、実際にこの機能を使ってみて「これならワンストップでいけそう」と感じました。「可視化をするならBIツールを入れなければいけない」というデータ活用の常識を覆せるかもしれません。
この記事では、まず Databricks と AI/BI 機能の概要を簡単にご紹介し、そのあとで実際に試した手順や感想をお届けします。使ってみて分かった便利なところ、少し惜しいと感じたところまで、率直にまとめました。
これから Databricks を触ってみようと思っている方も、他の BI ツールとの違いが気になる方も、ぜひ最後まで読んでみてください。
※本記事は2025年8月に実施した機能検証をもとに作成しております。
Databricksとは
Databricks は、クラウド上でデータの収集・加工・分析・可視化までを1つの環境で完結できるプラットフォームです。最大の特徴は「レイクハウス」と呼ばれる仕組みを採用していることで、データレイクの柔軟さとデータウェアハウスの性能を組み合わせています。表形式のデータはもちろん、ログや画像のような非構造化データも扱えます。
もう1つの特徴は、異なる役割のメンバーが同じ環境で作業できることです。データエンジニア、データサイエンティスト、アナリストが、ノートブックやダッシュボードを共有しながら共同作業を行えます。バージョン管理や柔軟にスケールできる計算環境も備えており、チームでの分析や開発をスムーズに進められるデータ基盤です。
Databricks AI/BIとは
Databricks AI/BI は、Databricks 上でデータの可視化や分析をより簡単に行えるように設計された新機能です。自然言語で質問や指示を入力すると、AI(Genie)が自動的に SQLやクエリを作成し、その結果を基にグラフを生成してくれます。このため、SQL や BI ツールの操作に不慣れな人でもすぐに分析を始められるのが特徴です。
また、生成したグラフは GUI 上でドラッグ&ドロップで自由に配置でき、色や軸の設定も柔軟に変更できます。対応しているグラフの形式は 15 種類以上あり、棒グラフや折れ線グラフに加えて、ドリルダウンなどの詳細分析機能も利用できます。
既存のダッシュボード機能との違いは、作成方法と作業の進め方にあります。従来のBIツールでは、基本的にはSQLやクエリをもとにデータソースを作成し、BIツール上で分析軸等を1つ1つ手作業で指定しグラフを作成していました。これに対し、DatabricksのAI/BI ではクエリの作成からグラフ生成までを AI がサポートし、必要に応じて可視化やレイアウトをすぐに調整できます。分析にかかる時間を短縮できるだけでなく、データの見せ方を試行錯誤する過程もスムーズにすることができるのが大きな利点です。
従来は「データ加工は Databricks、可視化は別の BI ツール」という分業が一般的でしたが、AI/BI 機能を使えば、データの取り込みから分析、可視化までを一つの環境で完結できます。
やってみた
可視化準備
サンプルデータを探す
まずは試験用に使えるサンプルデータを探しました。Databricks には公開データセットもありますが、今回は検証目的に合わせて手頃なアンケートデータをChatGPTに作らせてみました。 また、Genie で自由回答形式のテキスト検索を試したかったため、自分でサンプルデータにデータを追加しました。
データを取り込む
用意したデータ(CSV)を Databricks にアップロードし、テーブル形式で取り込みました。
取り込みの際に、BIで表示することを考えデータ形式の縦持ち(long)と横持ち(wide)変換も考慮しましたが、今回はそのままの形で利用しました。
この辺の準備は通常のBIツールでの可視化とそこまで変わりません。
AI/BIを使って可視化
準備が整ったので、さっそくAI/BI 機能を使ってダッシュボードを作成しました。

自然言語で「XX項目を棒グラフで表示して」「GPAの箱ひげ図を作って」等と入力すると、Genie が自動的にクエリを作成し、すぐにグラフを表示してくれました。

生成されたグラフは GUI 上で自由に配置を変更したり、右側のツールボックスから集計軸を切り替えたりできます。Genieによる生成でエラーが起きたり、指示した通りにうまくグラフを作ってくれなかったときなどの調整を人間の手で簡単にGUIでできるのがとても便利ですね。
また、今回は実施しなかったですが、Genieに指示をせずツールボックスでゼロから直接グラフを新規作成することもできます。

新機能を試してみた
あわせて、2025年7月に追加された新機能「テーマのカスタマイズ」と「グローバルフィルター」も試しました。
テーマの設定
ダッシュボード全体で統一感ある見た目にしたくて、テーマ機能を活用。テキストや背景色、ウィジェットのカラー、タイトルの配置やフォントスタイルまで自在に設定できるので、社内のブランドカラーやスタイルガイドに合わせた見栄えに調整可能でした。カラーコードレベルで調整できるので本当に好みの見た目にカスタムすることもできそうです。BIツールでもここまで柔軟にカスタムできないものもあるので、非常に良い機能だと思います。

グローバルフィルター
複数ページにまたがるダッシュボードで、共通のフィルターを一括で設定できる機能です。ツールバーからグローバルフィルターを設定するだけで、ページを移動してもフィルター条件が自動的に引き継げるので、とてもスムーズな機能だなぁと感じましたが、個別のフィルターとの使い分けをダッシュボード利用者に正しく認識してもらうのが難しいのかなと思っています。

感想・考察
実際に使ってみてまず感じたのは、Databricks の中だけでデータの取り込みから可視化まで完結できる手軽さです。これまで複数のツールを行き来していた作業が、一つの環境内でシームレスにつながるのは大きなメリットだと感じました。環境内で完結するからこそ、ネットワークや認証を個別で検討する必要もなく導入もスムーズにできると思います。
前段でも話しましたが、ドリルダウンといった詳細分析機能も備わっており、可視化形式も15種類以上と豊富です。実際触ってみて、私が普段使うような大部分のグラフはAI/BIで再現することができました。
一方で、複数軸を扱う場合の設定に制限があったり、箱ひげ図など一部のグラフでは細かい調整が難しい点も見られました。また、100%の積み上げ棒グラフのように、一部使いたいグラフがまだ提供されていないケースもありました。
総じて、現時点でも十分に実用的でありながら、今後のアップデートでさらに使いやすくなる可能性を感じる機能だと思います。
ただ、自然言語でグラフを生成できるという利点は、実際に使ってみると想像以上に便利で、SQLやBIツールの操作に慣れていない人にとっても強力なサポートになると感じました。
まとめ
Databricks の AI/BI 機能は、データの取り込みから可視化までをワンストップで実現できる便利な新機能でした。自然言語によるグラフ生成やGUIでの柔軟なレイアウト調整など、分析のハードルを下げる工夫が随所に感じられます。一部の可視化機能や調整項目に改善の余地はあるものの、既存のワークフローに組み込む価値は十分にあると感じました。データ分析のスピードと効率を高めたい人には、ぜひ一度試してほしい機能です。